2015年 5Day Art Challenge(五日目)

2015年2月24日

【2015年 5Day Art Challenge 五日目】は、和装の仕事を紹介させていただきました。



こちらの画像は「ろうけつ手描波縞」の着物と「インド更紗の帯」です。

着物はおよそ13mある着物生地の全面を白ロウというロウでベッタリと置き、波の線を一本一本目打ちで引っ掻き落し、その隙間に染料を擦り込んだ凝った加工のものです。

「織りの縞ではなく、描いた線でもない、版画のエッチングのような線」を布の上に染めで実現してみました。

この加工により、生地の厚みと立体感、そして織りでも描きでもプリントでも出来ない「線」のニュアンスが可能になります。大変な手間と材料の量がかかりますが、そうしないとこのニュアンスが出ないので、やるしかありません。

この波縞は波形の定規に沿って、ロウを目打ちで引っ掻き落してつくるわけですが、その定規はパソコンで数種類波の形を作り、アクリル屋さんでわざわざ作ってもらった特注品です。そこからつくりました。

「技術から文様をつくるのではなく、こういう布を作りたいというところから始める」のです。

帯は、更紗の「シャム更紗」と言われている精密で凝ったものを、和装に合うように少しイメージをサックリとさせ、繊細にしたものです。そして、それを全て日本の染色技法である「糸目友禅とろうけつ」そして引き染で制作しています。

雰囲気は古典のインド更紗そのものですが、しかし違和感なく、クドすぎないように文様を整理し、インド更紗の文様を日本の染色技法の密度と特性に置き換えます。

そのように、しっかり「本質はそのままに日本化する」ことが和装に他文化のものを取り入れる際には大切です。

ただそのままインド更紗の文様を踏襲しても、それは「同調」と「増幅」を起こしません。

現代の和装は、着る人と、纏う布、そして周りの環境、それぞれが「着ることによって文化的増幅を起こす」ことが大切だと私は思っています。




こちらは、更紗の訪問着です。

モデルは横山てる美さん。「きものギャラリー睦月」さんです。

衣桁にかけた状態ではそれほどゴージャスに観えませんが、実際に着るとゴージャスな印象になる着物です。

私は、着物の柄付けは洋服で良く使われる「トルソー(ボディ)」に巻き付けて考えます。

「実際に着た時にどのように観えるのか」ということを何度も確認するためです。

立体的に見て正解か、ということを確認することがとても大切で「衣桁にかけた時が一番良く観える」のではいけません。

そのような着物は「団体展の展示会用」であって、着るためのものではありません。それは例えば「ちりめんに染色技法で描かれた絵」なのであって、着物ではないと私は考えています。そのようなものは芸術コンプレックスがあって私は好みません。

こちらも更紗文様なので、日本とは違う文化からの引用ですが「日本的エレガンス」を重視し「上質な古典更紗が持つエレガンス」と「日本文化のエレガンス」を同調させます。

その「同調作業」は、「図案の技法」と言えます。

「使う染色技法に合う図案を描く」ことが大切です。

一般的に、近現代の手作り系伝統工芸は古くさい作家性などを主張されたものが多いですが、それは「技法と図案の一致」がなされていないからです。それゆえに、例えばいわゆる作家ものは「いつも同じようなものばかり」になってしまったり「絵画コンプレックスのような昔はモダンだったんだろうなあというもの」になってしまうわけです。

現代の和装には特に「文化の同調作業」が必要なのです。それは、日本の古典と、現代の和風には接点がなくなってしまっているという事実と、他文化のものとの取り合わせも昔よりさらに綿密に複雑になっている理由によります。

「現代日本文化は、昔の日本と断絶している部分がある」という事実を見据えて【現代人が新しく古典と出会う】必要があります。

そのように考え、和装品を作ります。





こちらは日本の桃山から江戸初期ぐらいの古典からアレンジして現代的な配色にして制作した紬の訪問着と紬の染め袋帯です。

着物も帯も「疋田絞り」を色糊で表しています。この疋田にあたる一粒一粒を、手で一つ一つ置いて行きます。手で一粒一粒置くことによってズレが出て、自然に、本疋田のようなニュアンスが出てくるわけです。手間は大変ですが。。。

この仕事では「桃山と江戸初期の頃の日本文化の豪放なエレガンス」を現代の女性の和装に表したいと思いました。

「古典の生命感と、現代の洗練」の両立をどのように達成するか、ということがテーマの仕事です。

現代「品が良い」というものは「味が薄いもの」と等価になってしまっているものが多いと思います。

しかし、昔のものの「品格」には生命感があります。


しかしだからといって昔の美意識をそのまま現代に持って来て意図無く使うと、それもやはり浮いてしまいます。

例えば、博物館にあるような昔の名品の着物を精密に写して制作して、現代に着用しても、それはやはり「違う」ものになってしまいます。

なぜなら、当時の着物の位置と意味、現代の着物の位置と意味が違うからです。

その内容を良く吟味し、古典と現代、図案と技法をつなげ、現代女性に合い、いつまでも古くさくならないような和装を制作しようと日々過ごしています。


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以上で【2015年 5Day Art Challenge 五日目】を終了いたしました。


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