− 仕事のことなど −

白地のぼかしの八掛に地色を染める

2018年1月13日



袷の着物の八掛には、白の地色(染めていない白生地のまま)にいろいろな色をぼかし染した八掛は良く使われますね。

留袖や重めの訪問着でなければ、とりあえず、これ付けておけばOKぐらいのノリでついていたりします。

特に薄い地色の着物の八掛では、表地に裏地と胴裏の継ぎ目が映らないように良く使われます。(通し裏などは別ですが)

それは実用的に表に響かず、便利です。このぼかしの八掛が開発されたのは昭和の戦後しばらくしてかららしいですが、考えた方はスゴイですね!

が、これが濃い地色の表地の場合は、白の地色に濃い表地のような色を染めたものだと、表地と裏地のコントラストが激しすぎて唐突感があったり、表が濃い地色で八掛の地色が白生地のままの真っ白だと下着感が強くて違和感を感じます。

しかし、ぼかしの八掛はなぜか地色が染まっているものが無いのですね。

もしかしたら、あるのかも知れませんが、私は今まで観たことがありません。。。

上の写真は、スタッフの凡(甲斐凡子)の私物の着物なのですが、凡のお祖母様からいただいたものです。

いただいた時には、白地に表地に似通った濃い色のぼかし染が施してある八掛がついていました。

それを、凡が自分用のサイズに仕立て直す際に「着物に当たり前についているこの白地にぼかし染めのものって、濃い地色とか中間色だと唐突過ぎるよね。八掛って着ると結構良く見えてしまうものだし、真っ白だと変な下着感もあるし」と今まで普通にある白地のぼかし染の八掛の違和感を語り合っていたら、

「ウチは染め屋だから地色を濃い地色の表地に合うように、ぼかし染の八掛の上から地色を染めれば良いんじゃん!(*бωб*)」

ということになり、八掛の地色を染めてみたら、バッチリなのです。

この画像をSNSなどで発表してみましたら「ああ、私はぼかし染の八掛は安っぽいし、なんだか仕方なしにつけている感じがして好きでは無かったですが、これならぼかしの八掛も良いものですね!」というご意見を多数いただき、やっぱり私達が感じていた不満を、お客さまがたも感じていらっしゃったんだなあと再確認。

これがスタンダードになると良いなあと思った次第です。

もし、こういうものをつくってみたい、と思われた方は、

呉服屋さんに、この画像をお持ちになって、

1)元からお好みの地色に染まっている八掛にお好みの色のボカシを入れてもらう
2)元からお好みの色のボカシになっている白地のものにお好みの地色を引染してもらう


ことで、だいたいお望みのものになるかと思います。

その方法なら、別注加工しても、それほど値段が高くならないと思います。

単に、業界に今までこういう発想が無かっただけですので、技術的には普通のものなのです。

もちろん、表地が濃い地色だけでなく、中濃度でも、薄い色でも、ぼかしの八掛を白地のままではなく好みの地色に染めたら、ぼかしの八掛の可能性が広がります。

このアイデアは(もしかしたら、もう既にあるのかも知れませんが)多くの人に広まって欲しいと思います。

万が一、ウチが初めてこのアイデアを思いついたのだとしても(笑)全然関係なく、ぜひ広まって欲しく思います。業界の方々にも是非やっていただき、広まってもらいたいです。


個人のお客様からの別注の帯の制作

2017年2月20日



着物のブログ 神奈川絵美の「えみごのみ」をされている医療系のライターの神奈川絵美さんから名古屋帯のご注文をいただき、制作しました。

打ち合わせから仕上がりまでのレポートをブログにまとめていただきましたので、紹介させていただきます。

神奈川さんからは今まで二本、名古屋帯をご注文いただき、それぞれ神奈川さんのイメージに合うように打ち合わせをし、形にして行きました。

三本目は、最大の難仕事でした(笑)
しかし、出来上がりも良いものになり、作り手として満足行くものになりました。

私が説明するよりも、ライターである神奈川さんの記事がとても分かりやすく、発注した側からの視点で臨場感溢れるものなので、是非リンク先をお読みいただきたく思います。


ユーミンのラジオから1

ユーミンのラジオから2

ユーミンのラジオから3

ユーミンのラジオから4

ユーミンのラジオから5

ユーミンのラジオから6

ユーミンのラジオから7


このような、制作側に信頼を置いて下さった上での別注制作は、制作する側としてはとても楽しみなものであり、普段の視点を広げてくれる良い機会になります。

それにより、文化はモノそのものに宿るのではなく、制作する側と使う側(発注する側)の間の空間に存在する、ということを確認出来る、良い機会なのです。

そのような機会を与えていただき感謝です。



2015年 5Day Art Challenge(五日目)

2015年2月24日

【2015年 5Day Art Challenge 五日目】は、和装の仕事を紹介させていただきました。



こちらの画像は「ろうけつ手描波縞」の着物と「インド更紗の帯」です。

着物はおよそ13mある着物生地の全面を白ロウというロウでベッタリと置き、波の線を一本一本目打ちで引っ掻き落し、その隙間に染料を擦り込んだ凝った加工のものです。

「織りの縞ではなく、描いた線でもない、版画のエッチングのような線」を布の上に染めで実現してみました。

この加工により、生地の厚みと立体感、そして織りでも描きでもプリントでも出来ない「線」のニュアンスが可能になります。大変な手間と材料の量がかかりますが、そうしないとこのニュアンスが出ないので、やるしかありません。

この波縞は波形の定規に沿って、ロウを目打ちで引っ掻き落してつくるわけですが、その定規はパソコンで数種類波の形を作り、アクリル屋さんでわざわざ作ってもらった特注品です。そこからつくりました。

「技術から文様をつくるのではなく、こういう布を作りたいというところから始める」のです。

帯は、更紗の「シャム更紗」と言われている精密で凝ったものを、和装に合うように少しイメージをサックリとさせ、繊細にしたものです。そして、それを全て日本の染色技法である「糸目友禅とろうけつ」そして引き染で制作しています。

雰囲気は古典のインド更紗そのものですが、しかし違和感なく、クドすぎないように文様を整理し、インド更紗の文様を日本の染色技法の密度と特性に置き換えます。

そのように、しっかり「本質はそのままに日本化する」ことが和装に他文化のものを取り入れる際には大切です。

ただそのままインド更紗の文様を踏襲しても、それは「同調」と「増幅」を起こしません。

現代の和装は、着る人と、纏う布、そして周りの環境、それぞれが「着ることによって文化的増幅を起こす」ことが大切だと私は思っています。




こちらは、更紗の訪問着です。

モデルは横山てる美さん。「きものギャラリー睦月」さんです。

衣桁にかけた状態ではそれほどゴージャスに観えませんが、実際に着るとゴージャスな印象になる着物です。

私は、着物の柄付けは洋服で良く使われる「トルソー(ボディ)」に巻き付けて考えます。

「実際に着た時にどのように観えるのか」ということを何度も確認するためです。

立体的に見て正解か、ということを確認することがとても大切で「衣桁にかけた時が一番良く観える」のではいけません。

そのような着物は「団体展の展示会用」であって、着るためのものではありません。それは例えば「ちりめんに染色技法で描かれた絵」なのであって、着物ではないと私は考えています。そのようなものは芸術コンプレックスがあって私は好みません。

こちらも更紗文様なので、日本とは違う文化からの引用ですが「日本的エレガンス」を重視し「上質な古典更紗が持つエレガンス」と「日本文化のエレガンス」を同調させます。

その「同調作業」は、「図案の技法」と言えます。

「使う染色技法に合う図案を描く」ことが大切です。

一般的に、近現代の手作り系伝統工芸は古くさい作家性などを主張されたものが多いですが、それは「技法と図案の一致」がなされていないからです。それゆえに、例えばいわゆる作家ものは「いつも同じようなものばかり」になってしまったり「絵画コンプレックスのような昔はモダンだったんだろうなあというもの」になってしまうわけです。

現代の和装には特に「文化の同調作業」が必要なのです。それは、日本の古典と、現代の和風には接点がなくなってしまっているという事実と、他文化のものとの取り合わせも昔よりさらに綿密に複雑になっている理由によります。

「現代日本文化は、昔の日本と断絶している部分がある」という事実を見据えて【現代人が新しく古典と出会う】必要があります。

そのように考え、和装品を作ります。





こちらは日本の桃山から江戸初期ぐらいの古典からアレンジして現代的な配色にして制作した紬の訪問着と紬の染め袋帯です。

着物も帯も「疋田絞り」を色糊で表しています。この疋田にあたる一粒一粒を、手で一つ一つ置いて行きます。手で一粒一粒置くことによってズレが出て、自然に、本疋田のようなニュアンスが出てくるわけです。手間は大変ですが。。。

この仕事では「桃山と江戸初期の頃の日本文化の豪放なエレガンス」を現代の女性の和装に表したいと思いました。

「古典の生命感と、現代の洗練」の両立をどのように達成するか、ということがテーマの仕事です。

現代「品が良い」というものは「味が薄いもの」と等価になってしまっているものが多いと思います。

しかし、昔のものの「品格」には生命感があります。


しかしだからといって昔の美意識をそのまま現代に持って来て意図無く使うと、それもやはり浮いてしまいます。

例えば、博物館にあるような昔の名品の着物を精密に写して制作して、現代に着用しても、それはやはり「違う」ものになってしまいます。

なぜなら、当時の着物の位置と意味、現代の着物の位置と意味が違うからです。

その内容を良く吟味し、古典と現代、図案と技法をつなげ、現代女性に合い、いつまでも古くさくならないような和装を制作しようと日々過ごしています。


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以上で【2015年 5Day Art Challenge 五日目】を終了いたしました。


その他、このブログでは

*雑感(私の考えるあれこれ)

*料理の話題(私がつくる料理や料理、お茶、お酒などの話題)

母屋サイトの方の

*創作への姿勢

*染色の技術

などご覧いただければ幸いです。




2015年 5Day Art Challenge(四日目)

2015年2月23日

【2015年 5Day Art Challenge(四日目)】は、ロゴデザインの仕事を紹介させていただきました。

私はグラフィックデザイナーではありませんが、一般的なデザインとは少し違うものを望まれる方からご依頼がある事があります。そのなかの三つを紹介させていただきます。

ロゴの仕事では「一度見ればその会社と人のことを覚えられるシンプルさと強さと美しさ」そして「その会社のイメージを凝縮させる」ことを重視して仕上げます。



こちらは、日本の文化芸術をアメリカニューヨークで紹介する活動をされている「Setsuko Bouteille」さんが主催する「Magnoria NY」のロゴです。

私も、せつこさんのお陰で、NYで個展をすることが出来ました。

*NYの展示会の様子1

*NYの展示会の様子2


せつこさんには、その他個展をいくつか企画していただき、いつもお世話になっております。私の他にも、いろいろな分野の人たちが紹介もされておりますので、是非「Magnoria NY」のサイトをご覧下さい。

こちらのロゴでは、せつこさんからマグノリアの原初的な美しさや力を表して欲しいことなどのご要望をいただき、それを、今までのせつこさんの仕事と、せつこさんご自身のイメージ、NYで活躍する女性のエレガントなイメージと合わせ、そして、どこか日本的な感覚が香るようなものにしました。





こちらは 石崎 功 氏の、日本の総合文化プロデュース、きものビジネスコンサルティング・呉服業界人材育成を業務とする「KDC Planning」のロゴです。

石崎氏とは、石崎氏がコンサルタントとして独立した当初からのお知り合いで、コンサル事業に対する自らの考えを集約したロゴをデザインして欲しいということで制作いたしました。サイトの作りの方向性なども多少関わりました。

石崎氏が和装関係の業界で大切だとする考えは「川上から川下までのスムーズな流れ、それぞれが力を発揮出来る構造づくりとそのメンテナンス」ということです。それをロゴとして形に出来ないかということで、いろいろ考えました。

そこで閃いたのが、このロゴで、一番上の紡錘形を横にした細い形が、上流、そしてそれが太くなったのが中流、そして最後の「繭の形」が下流であり、海である、というイメージです。一番最後の繭の形は「業界に関わる製造、卸、販売の流れがスムーズに行って、エンドユーザーに形と実のあるものを提供するということと、和装業界人にとって最も身近な絹の元の繭とを合わせた」わけです。




こちらは、私の工房「Foglia」のロゴです。

「フォリア」とは、イタリア語で「葉っぱ」とか「花びら」の意味だそうです。

最近は「Foglia フォリア」とだけ名乗り、染色に関することは「dye works Foglia」とすることが多いです。

なぜ、多く日本の染色のものを制作する工房なのにこんな名前をつけたかというと、一般の方がイメージする「手作り作家さん」「伝統工芸の職人さん」というものと、私の作品や考え方が一致しないことに困ったからです。

「それなら、いわゆる伝統工芸などをイメージ出来ない、何だか分からないものにしてしまった方が良い」と考えたのです。ただ作品や私の姿勢を見てもらうにはその方が良い、と。

いわゆる伝統工芸のイメージ→仁平は違う→で、どういうこと?→これこれこういうことでして→結局良く分んないからいいや

となっていたものを

(分野や予備知識関係なく)何コレ面白いね→はい、ありがとうございます。

で済むようになった感じです。

そのような事情から、私が手紙などの最後にちょっと葉っぱのイラストなどを描いていたものを整理してロゴに仕上げました。

この戦略はうまく行き、今に至っています。


次は、着物と帯の仕事を紹介させていただきます。






2015年 5Day Art Challenge (三日目)

2015年2月21日

【2015年 5Day Art Challenge 三日目】は油彩の仕事を紹介させていただきました。

三年位前から、油彩も描いて発表し始めました。
若い頃は描いていましたが、久々の油彩です。

「生命体が形を持つ前」「生命が形を持ち始めた直後の原初的な感じ」「揺らぎ」「発生」そのようなイメージを形にしたいと思い、制作したシリーズです。

着物や帯、染額では表せないものを紙の仕事で行っていましたが、さらに表せないものは、油彩で描きます。油彩を、いわゆる油彩的な解釈とは違う、単に顔料とメディウムと溶剤として捉えて、それを感覚的にしっくる来るように使います。




油彩「湖底」キャンバス/油彩




油彩「水の起源」板に手漉き紙/油彩




油彩「渓谷の妖精」板に手漉き紙/油彩


(次はロゴデザインの仕事を紹介させていただきます)